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選択的夫婦別姓が法律で認められたときの3つのメリットと5つのデメリット

time 2024/09/22

選択的夫婦別姓が法律で認められたときの3つのメリットと5つのデメリット

夫婦別姓は、近年ますます注目を集める結婚制度の一つであり、現代社会における家族や個人の在り方を再考する機会を提供しています。

夫婦が結婚後もそれぞれの姓を保持することができる夫婦別姓は、日本ではまだ法的に認められていないものの、事実婚などの形で実際に別姓を選択しているカップルも増えています。

こうした選択肢が提供するメリットとデメリットを考えることは、これからの家族のあり方や個人の尊重についての理解を深めるために重要です。

 

今回は、夫婦別姓のメリットとデメリットに焦点を当て、現代社会におけるその意味と課題について探っていきます。

 

選択的夫婦別姓が法律で認められた場合のメリット

選択的夫婦別姓が法律で認められた時のメリットは以下の3つです。

 

1. 個人のアイデンティティを尊重する

夫婦別姓の最大のメリットは、結婚しても自分の姓を保持できることで、個人のアイデンティティを保てるという点です。

 

特に女性にとって、結婚後に夫の姓に変更することは、社会的に「夫の家に入る」といった従来の家制度を感じさせるものであり、これを回避したいと考える人々がいます。

自分の姓を保つことで、個人としての独立性や自己のアイデンティティを結婚後も継続できるのは、現代の価値観に合った選択肢と言えるでしょう。

 

2. キャリアや専門性を守る

もう一つの大きな利点は、キャリアや専門分野で築いた実績を維持できる点です。

特に仕事上で旧姓を用いることが多い職業、たとえばジャーナリストや学者、アーティストなどにとって、姓の変更は業績や知名度に影響を与えるリスクがあります。

 

夫婦別姓を選ぶことで、結婚後もこれまでのキャリアに悪影響を及ぼすことなく、社会での認知度を保つことが可能です。

姓の変更による事務的な手続きの手間も省け、業務に支障をきたすリスクも低減します。

 

ただし、これに関してはビジネスネームとして旧姓のまま使うことが現在(2024年9月時点)でも認められている職場環境が多いので、キャリアを守ることに関しては大きな問題ではないかもしれません。

 

【追記】:ビジネスネームの使用ができない場面

  • クレジットカードや銀行口座の名義
  • 源泉徴収票や登記、官公庁に提出する書類
  • 年末の確定申告や、社会保険に関する手続き、マイナンバーが必要な手続き
  • 企業が整備する労働者名簿

 

不動産の登記に関しては、不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第7号)により2024年4月から旧姓併記という形で認められました

⇒【法務省HP】所有権の登記名義人への旧氏(旧姓)の併記について(不動産登記関係)

 

3. 男女平等の実現

夫婦別姓の導入は、男女平等の観点からも重要なステップとされています。

現在の日本では、結婚後に夫の姓に変更するのが一般的であり、これは夫婦のどちらかが相手に従うという象徴的な意味合いを持つことがあります。

 

しかし、夫婦別姓を選択することで、夫婦が平等な立場であり、どちらの姓も尊重されるというメッセージを社会に発信することができます。

これにより、家庭内での役割分担や性別に基づく不平等な期待が軽減される可能性があります。

 

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選択的夫婦別姓が法律で認められた場合のデメリット

選択的夫婦別姓が法律で認められた時のデメリットは以下の5つです。

 

1. 家族の一体感が希薄になる可能性

夫婦別姓に対する反対意見の中で最もよく聞かれるのが、家族の一体感が薄れるという懸念です。

夫婦や家族が同じ姓を持つことは、従来から家族の絆や一体感を象徴するとされてきました。

 

特に日本では、同姓であることが家族の一員としての結束を示すものと見なされます。

別姓を選択することで、家族間での連帯感や一体感が失われるのではないかという懸念点が考えられます。

 

2. 子どもの姓に関する問題

夫婦別姓のもう一つの大きな課題は、子どもの姓に関する問題です。

夫婦が異なる姓を持つ場合、子どもがどちらの姓を名乗るのかという選択肢が生じます。
この決定が家族間で合意に至らない場合、トラブルの原因になることがあります。

 

また、子どもが異なる姓を持つことで、学校や社会生活において混乱や偏見を受ける可能性も指摘されています。

日本のように、同姓が一般的な文化圏では、別姓の家族が社会的に異質と見なされる場合もあり、特に子どもにとっては心理的な負担となることが懸念されます。

 

心身共に大きく成長する過程で、親と違う姓を強制的に名乗らされることでの子どもへの影響を考えないといけません。

 

3. 戸籍制度の大きな改変を伴う

選択的夫婦別姓が法律で認められた場合、戸籍制度を改変しなくてはなりません。

現在の戸籍制度は家族が同じ姓を名乗る前提で作られています。

選択的夫婦別姓が法律で認められた場合、別姓を選んだ家庭に関しては今の形では取り扱いできませんので大きなシステム変更が必要です。

 

また、制度変更に伴い、大きな費用(税金)と労力がかかります。

 

4. 戸籍制度変更による事務手続きの負担増

戸籍制度変更により、

  • 家庭を担当する役所の事務手続き(本人確認や関係性確認)
  • 企業内での事務手続き(年末調整など)

を担当する部署に負担がかかります。

 

5. 日本人としてのアイデンティティが不安定になる可能性

人によって感覚の差があるので難しい問題ですが、夫婦別姓になることでアイデンティティが揺らぐ可能性があります。

アイデンティティとは『縦の関係』と『横の関係』によって定まります。

  • 縦の関係とは、先祖代々つながってきたという歴史との関係性、連続性
  • 横の関係とは、現在この社会で生きている人たちとの関係性

です。

 

この二つの関係性で日本人としてのアイデンティティが定まります。

戸籍制度が変更され、家族の一体感が希薄になって縦の関係性が揺らぐことで、自分は一体何者なのかというアイデンティティが揺らぐことも考えられます。

 

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ちなみに海外の法律では

ちなみに、海外では夫婦同姓を法律で義務付けている国はありません

これは日本が遅れているという単純な理由ではなく、戸籍制度の存在が関係しているようです。

 

なお、戸籍制度は世界でも珍しい制度で、日本と台湾にしかありません。

(韓国は2008年に廃止され、家族関係登録簿となりました)

 

といっても、世界と一緒にするのか、日本は独自の制度を続けていくのかという二者択一の話ではありません。

日本という世界にも例を見ない独自の文化を保っている国の国民が、国家観や日本人というものはどうあるべきかということを問い直す良い機会ではないでしょうか。

 

夫婦別姓を巡る日本の現状と今後の展望

夫婦別姓に対する意見は、必要性も含め賛否が激しく分かれていますが、現代社会においては家族の形が以前のように定型的でなくなっていることは事実です。

それに応じて夫婦別姓を支持する声が高まる一方で、家族の一体感や伝統的な家族観を守りたいという声も依然として根強くあります。

 

日本では、夫婦別姓に関する法改正の議論が長年続いていますが、現時点では法的に認められていません。

しかし、社会全体がより多様な価値観を受け入れる方向に向かっていることから、今後夫婦別姓が法的に認められる可能性も考えられます。

 

そこで立ち止まって考えたいのが、現在の戸籍制度の変更をすることで少なくとも明治初期(明治4年:1871年戸籍法制定)まで遡ることができる歴史の連続性を断ち切ることです。

これをたかが約150年と考えるのか、されど約150年と考えるかは人によって違います。

※ちなみに最古の戸籍は天智天皇の庚午年籍(670年)と言われており、江戸時代には「人別帳」「宗門帳」という登録簿が存在していました。

 

前述の通り、国家観や日本人というものはどうあるべきかということを問い直す良い機会と捉え、慎重に議論を進めていくべきではないでしょうか。

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