2024/10/11

お酒の場で、しばしば起こってしまう急性アルコール中毒。
特に取り沙汰されるのが、春の新人歓迎会などの時期ですね。
まだ自分のお酒の許容量を知らない若者が飲み過ぎたり、飲まされ過ぎたりして発症してしまうことが多い印象です。
アル中というと、慢性的にお酒を飲み過ぎてやめられなくなった人を指すことが多いのですが、急性のアル中もあります。
Contents
急性アルコール中毒とは
急性アルコール中毒(英語:acute alcoholism)とは、短時間に基準値を超える多量のアルコール(※)を摂取することで生じる中毒のことです。
アルコールは脳を麻痺させます。
その麻痺が大脳の外側から中に向かって進むと、呼吸や心臓の働きを制御する生命維持に関わるところ(脳幹部)にまで及びます。
その結果として、脳の中枢神経を麻痺させてしまい、呼吸や心拍を停止させてしまいます。
具体的には、血中アルコール濃度が0.4%を超えると、1~2時間でおよそ半分の人が死亡します。
また、吐瀉物を喉に詰まらせて窒息死するというケースもあります。
※一般的に認識されているアルコールは、正確にはエチルアルコール(エタノール)のことですが、本記事では便宜的にアルコールと記載します。
急性アルコール中毒になる原因
上でも示した通り、短い時間で基準値を超えるアルコールを摂取することです。
注意したいのが、いわゆるお酒が強い人でもこの状態になり得るということです。
というのも、血中アルコールの量(濃度)が問題になるため、一気に多量のアルコールを摂取すると、分解が追い付かないからです。
特に飲み始めは気をつけてください。
酔いが回るのに約30分はかかりますので、自分が飲み過ぎていることに気づきにくいのです。
アルコールに関する厚生労働省の定めた基準
厚生労働省では、アルコールの一日における基準摂取量を定めています。
「節度ある適度な飲酒」としては、1日平均純アルコールで約20g程度である旨の知識を普及する。
⇒ http://www1.mhlw.go.jp/topics/kenko21_11/b5.html
主な酒類の換算の目安
お酒の種類 | ビール (中瓶1本500ml) | 清酒 (1合180ml) | ウィスキー ブランデー (ダブル60ml) | 焼酎 (1合180ml) | ワイン (1杯120ml) |
アルコール度数 | 5% | 15% | 43% | 35% | 12% |
純アルコール量 | 20g | 22g | 20g | 50g | 12g |
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急性アルコール中毒の症状
初期症状としては
- 呂律が回らない
- 歩けなくなる
- 激しい頭痛
- 嘔吐
- 寒気
- 激しい動悸
などがあります。
これがひどくなると、
- いびきをかいて、こちらの呼びかけに反応がなくなる
- 体が冷たい
- 口から泡を吹く
- 体が痙攣する
- 浅く速い呼吸(過呼吸状態)、あまりに遅い呼吸
- 激しい嘔吐、吐血
と症状が進行し、昏睡状態に陥ります。
この状態になった場合は、応急処置をし、速やかに救急車を呼ぶ必要があります。
急性アルコール中毒の応急処置、対処法
まず、意識があるかどうかを確かめてください。
意識がある場合
横になって、楽な姿勢をとらせ、可能であれば水やお茶を少しずつ飲ませてください。
その後に、意識を失うこともありますので、付き添い人を一人つけ、時折呼びかけるなどして確認してください。
特に胸の動きを注視して、呼吸に異常がないか確かめましょう。
その上で、締め付けのある衣類の場合は緩め、横向きの体勢(下図:回復体位)をとらせます。
嘔吐しそうなときは横向きのままで吐かせるようにしてください。
仰向けのままですと、吐瀉物が喉に詰まって窒息する可能性があります。
※無理に吐かせるのはNGです。
急性アルコール中毒における回復体位(Wikipediaより)
意識がない場合
体を揺さぶらずに、耳元で呼びかけてください。
反応がない場合、軽く体を叩いて意識を確認してください。
意識がなく、体が冷たくなり、呼吸に異常がある場合は速やかに救急車を呼んでください。
呼吸がない、脈がない場合は仰向けに寝かせ、人工呼吸と心臓マッサージを施してください。
救急車が来るまでの応急処置がとても重要です。
注意点
実は恐ろしいことに、アルコール(エタノール)の急性中毒には解毒薬がありません。
ですので、病院では対症療法として強制利尿をさせ、アルコールの排出を促すといった治療が行われます。
実際には時間が経過すること以外、有効な対処法はありません。
必ず付き添い者をつけ、急性アルコール中毒が疑われる人を注視しておいてください。
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急性アルコール中毒の診断
急性アルコール中毒の診断には、血中アルコール濃度を測定する必要があります。
しかし、全ての病院でこの検査が行えるわけではありません。
また、患者の状態を見て、検査よりも対処・治療の方を優先されることもあります。
上で紹介した通り、血中アルコール濃度が0.4%を超えると、1~2時間以内での死亡率が約50%にまで高まりますから、それまでに適切な処置を行なう必要があるわけです。
さらに重要なことは、患者が意識を失っている場合、それが本当に急性アルコール中毒によるものなのかという判断を医師が行わなければならないということです。
酩酊したことにより、どこかで頭を打って昏倒している。
もしくは、糖尿病患者が高血糖で意識障害を起こしているという可能性もあるからです。
急性アルコール中毒の治療
アルコールを多量に摂取したことで、脱水症状を起こしている場合は点滴などで水分を補う必要があります。
利尿を促進させて、アルコールの体外への排出を助ける効果があります。
とはいえ、まずは体内でアルコールが分解されるのを待つ必要があります。
前述の通り、アルコールには有効な解毒剤、解毒薬は存在しないからです。
症状が比較的軽ければ12時間以内に回復します。
ひとまずは入院が必要だということです。
ちなみに、薬物の過剰摂取への応急処置で施される胃洗浄も、急性アルコール中毒には効果がありません。
なぜならば、アルコールは体内への吸収が早いからです。
急性アルコール中毒の後遺症
急性アルコール中毒には後遺症が出ることがあります。
具体的には
- 記憶障害(物忘れがひどくなる)
- 注意障害(集中力の欠如)
- 社会的行動障害(コミュニケーション障害、感情コントロールができにくくなる)
- 運動失調(平衡感覚の欠如)
- 片麻痺(呂律が回らない、体の片側に力が入りにくい)
などです。
これらは重いものですが、軽いものでもめまいや吐き気が数日続くことがあるようです。
めまいやふらつきなどの後遺症が出るというのは運動失調の影響が考えられ、また、胃が重い、吐き気がするという後遺症はアルコールによって胃にダメージがあるからでしょう。
まとめ
意識を失って、呼吸に異常がある場合は速やかに救急車を呼びましょう。
救急車が来るまでに回復体位をとらせるなど、適切な応急処置も必要です。
東京都だけでも、一年に1万人以上の人が急性アルコール中毒で救急搬送されているというのですから、驚きです。
楽しいはずのお酒の場で、死亡事故など起こさないように注意を払ってください。
特に、飲み始めの30分~1時間くらいは気をつけてください。
くれぐれも自分のペースで飲むようにしてくださいね。
コメント
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